第80章 進展
涙と一緒に、髪の毛先から断続的に落ちる水滴が、まるで雨粒みたいだ。
ぱたぱたとマットにシミを作るのが、なんだか少し神秘的で、どことなく痛々しくて。
思わずみわの手からタオルを取り、くしゃくしゃと髪を拭いた。
「わ、涼太……っ?」
「なんでそんなコト言うのか、ワケわかんないんスけど」
ごめんなさい?
嫌いになるよね?
それはこっちのセリフ。
オレのコト、怒ってたんじゃないんスか?
「っ、だって……やっと、成人したねっていう日に、私……」
消え入りそうな声で、縮こまってしまうみわ。
「涼太にふさわしい大人の女性になるって、誓ったばっかりなのに……!」
「ぶはっ」
堪らず吹いた。
盛大に吹いた。
「……おもしろ、かった?」
「待って、それで泣いてたんスか?」
「……めそめそするのもやめようって、思ってたのに……」
ちっちゃくなってちっちゃくなって、消えてしまいそうだ。
みわはどうやら、ひたすら自己嫌悪に陥っていたらしい。
「オトナの女性になるって誓ったのに、お漏らししたって?」
「あの……出来ればですね、もう少し、表現方法を変えて頂けると……」
あ、でも変えるって言っても、無理だよね……
と考え込む様は、いつもの真面目なみわ。
そんなに気にするコトっスかねえ、なんて思っていたオレとの温度差に、ちょっとだけ反省する。ちょっとだけ。
「みわ、なんかみわの話を聞いてると、益々自分のヘンタイ度の上がりっぷりに驚くんスけど」
全国のオトコの皆さんなら分かって頂けるハズだ。
抱いてる女が、気持ち良すぎておかしくなっちゃうなんて、いつもと違う自分になるなんて、嬉しい以外の何かあるんだろうか?
しかし、こんなに見るからに落ち込んでるみわにそう言っても、伝わりそうにない。
「オレがどんだけ嬉しいか、直接教えるけど、いいっスか?」
「直、接?」
誤解のないように、ちゃーんと伝えなくちゃね。