第80章 進展
まさかすぐにキスをされるとは思わなくて、慌てて口元を拭う。
涼太、口に入っちゃったかな。
入ったよね、入っちゃったよね、大丈夫かな。
……私ちゃんと、うまく出来たかな。
「だ、大丈夫、だった? 私、ちゃんと……」
顔を上げようとしたけど、それは叶わなかった。
強い力で、突然抱き締められたから。
「っ、涼太?」
少し苦しいくらいの、力。
素肌が密着しすぎて、ふたりの境目が曖昧になってしまいそう。
「みわ」
「は、はいっ」
「みわ……」
「……涼太?」
名前を呼ぶ声が、なんだか涙声のようにも聴こえて。
何か、まずい事をしてしまったのかな。
でも、そんな感じもしなかったような気がするんだけれど、えっとえっと……。
「もー、マジでさ……」
「う、ん……っ」
力が緩んで覗き込まれたと思ったら……また、キス。
突然の事で、ちゃんと息が出来てなかった。
鼻から吐こうとしても、変な声が合わせて出てしまって、うまく出来ない。
「ん、ふ……ぅ」
いつもの、探るようなからかうような素振りが全くない、激しい口づけ。
酸素量が減っているせいなのか、頭がぼーっとする。
どうしよう。
どうしたんだろう。
なんだか、いつもと違う。
いつもはなんていうか、涼太がいっちゃった後は、暫くお喋りしたり、いちゃいちゃしたりしてるのに……なんかこんな、何考えてたんだっけ、とにかくこんな、激しくないもの。
身体を繋げてる時のような、呼吸までをも奪い合うようなキス。
身体全体が、燃えるように熱い。
「みわ……、ごめん、触っててくれる? ……そしたら多分、早く勃つ」
「っ、そんな、焦らなくても、あの、ゆっくりで」
なんでこんなに急いでるんだろう、時間がないわけでもないし、どうして?
髪を乱すように掴まれた手の動きも、あちこちを愛撫する腕の動きも、全然余裕がなくて。
「みわん中……早く、入りたい」
その懇願のような囁きと深く重なる唇に、思考は動きを止めていった。