第80章 進展
待って、やる気の出た涼太に敵う気がしない。
いや、元々全く敵わないんだけれど!
軽く身の危険を感じて、何か取れる策はないものかと考え始めたけれど……遅かった。
肩に腕を回されて、覗き込むようにして視界に入って来たと思ったら、そっと柔らかな唇が重なる。
「……出る?」
ささめくその声が、憎らしいほどに色っぽくて。
何故か咄嗟に首を横に振ってしまった。
「出ないんスか? のぼせちゃうっスよ」
私がテンパっているのが分かるんだろう、涼太はニコニコ余裕の表情。
謎の対抗心がふつふつと湧き上がる。
「う、ん……逆上せちゃうだろうから、あの、ちょっと、座ろう」
涼太は、微笑みながらちょっとだけ首をかしげると、浴槽の縁に座ってくれた。
「いいんスけど……寒くないスか? 冷える前に出て、ベッドで……って、ちょ」
私の突然の行動に驚いたのか、涼太の身体に力が入る。
その筋肉質な足の間に身を滑り込ませて、ゆっくり身を屈ませ……固く、大きくなった屹立に、ふんわりと口付けた。
「みわ……っ、いいって、そんな」
涼太は、私が口でしようとするのを止める事が多い。
多分……私の過去やあの事件の事を考えて、遠慮してくれてるんだと思う。
でも……それとは、関係ないから。
私が、涼太の全部を愛したいだけだから。
痛くないように、唇を裏側の筋に沿って上がったり、下がったり。
「……っ」
嫌、とかじゃ、ない、よね……?
顔はその位置のまま、目線だけを涼太に送ると、彼は困ったように眉を顰めて、目を細めている。
い、嫌とかじゃ、ないよね……?
鳥さんが啄むように、あちこちに口で触れると、涼太の腰がピクリと揺れた。
「みわ、っ……マジで、さ」
「涼太……」
涼太、すきなの。
大好きなの。
この気持ちを、少しでもいいから行動に変換して、伝えたい。
一緒に居られる時間は短いから、濃密な時間を、過ごしたい。