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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第80章 進展


「……分かってるんスよ、分かってる。みわのためを考えたら、ちゃんと……」

涼太はそこで言い淀んで、湯船に顔がついてしまいそうなほど、首を垂れた。

「……分かってるんス、けど」

思い切ったように顔を上げてこちらを見た瞳は、いつもと同じ、強い意志を持った琥珀色。

「面倒でしょ、オレと一緒に居るのって。多分、遠慮もいっぱいさせてると思うし」

「そんなこと」

「デートだって、人混みに行くには変装して、隠れて。別に悪いコトなんか何にもしてないのに、みわにも気を遣わせなきゃなんないし」

「そんなこと!」

さっきからうまく言葉が出なくて、大きく首を横に振った。
まるで、水浴びした後の大型犬みたいになっちゃったかも。

涼太は、そんな私の様子を見て、優しく微笑んだ。

面倒なわけがない。
それを言うなら、私の方が涼太に背負わせたくない荷物を、いっぱい持って貰っている。
私なんかよりも、涼太にふさわしい女性は沢山いる。
私が身を引かなきゃならないの、そんな事はずっと前からよく分かってる。

もしかして、この流れはそういう話……なのかな。
ドクンと心臓が脈打つ。

私と居るの、疲れちゃった、とか……。

「……涼太、それって」

「でも、やっぱりオレはみわと一緒に居たい。他の誰かに代わりは出来ないんスよ」

「……え」

「オレ以外のオトコとなんて、考えられない。想像すらできない。したくない」

彼の口から紡がれていく言葉に、ただ耳を傾けるしか出来ない。

「こんなオレだけどさ、面倒もいっぱいあると思うんスけど……これからも一緒に居てくれるっスか?」

この、贅沢すぎる言葉はなんなんだろう。
不安に揺らいだ心臓が、今度は違う意味を持って脈打つ。
視界が滲んでくる。

「ね、みわ。オレのワガママきいて。うんって言って」

覗き込まれて、言葉が出ないまま2回頷いた。

かろうじて出そうになった言葉は、彼の唇に呑まれていった。



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