第27章 海常祭
「……ここ……あれ……?」
どうやら黄瀬くんの息抜き場所の内の1つらしい。
通った事のない道をスイスイ抜けていくと、見知った建物が目に入って来た。
「ちょうどバスケ専用体育館の真裏っスよ、知らなかったっスか? ここ、人来ないし屋根もあってで快適なんスよね」
私も入学当初この付近をウロウロしたけど、ここまでは来なかったな。
屋根や木々のおかげで日陰になっているからか、随分涼しく感じる。
「あ、みわっち制服汚れちゃうっスかね? コンクリートだから痛いかも」
「ううん、それは大丈夫。ちょっとのんびりしようか」
少し段差になっている所に、2人で並んで座った。
ジリジリと眼前のアスファルトを焦がし続ける陽射しに目を細め、唸り続ける虫の声に耳を傾けていると、唐突に眠気が襲ってきた。
2人とも満腹だからか、睡魔と戦い身体がゆらゆらと左右に揺れる。
先に陥落したのは黄瀬くんだった。
頭がわたしの肩にもたれかかってきた。
柔らかい髪とともにふんわりした香りが心臓を跳ねさせる。
……この体勢、首痛くならないかな。
そっと黄瀬くんの頭を、自分の膝に誘導した。
膝枕。
ちょっと恥ずかしいけど、もう寝てるし大丈夫だよね。
黄瀬くんの髪を優しく撫でていると、私にも抗えない睡魔がやってきた。
私も、少し眠……
なんとなく人の気配がして、目が覚める。
気配がする方向を見ると……
桐皇の桃井さんに青峰さん、誠凛の黒子くんに火神さんがそこには居た。
普段想像のつかないメンツに、驚いて何も言うことが出来ない。
皆、お好み焼きやらたこ焼きやら焼きそばやらを手にしている。
3年生の先輩にも会ったのかな。
火神さんが凄い量を持ってるけど……。
「あ、起きた! みわちゃん、来ちゃった」
桃井さんが可愛らしい笑顔で手を振る。
「ごめんね、桃井さんメールくれてた? 気付かなくて……」
「さつきでいいってばー。返事ないからここら辺でお昼寝でもしてないかなって思ったんだ」
「桃井さん、流石ですね」
「大ちゃん、テツ君に褒められた!」
「へーへー、よかったな」
「青峰、これうめーぞ!」
「オメーはさっきから食い過ぎなんだよ!」
途端に場が騒がしくなる。
膝の上の黄瀬くんはまだ目を覚まさない。