第80章 進展
涼太の指って、どうしてこんなに気持ちいいんだろう……。
頭皮をマッサージする力加減も絶妙で、思わずうっとりしてしまう。
「はい、流すっスよ」
「お、願いします……」
促されて目を瞑っていると、頭上から降って来たお湯によって、あわあわが流されていく。
なんで、全部やって貰ってしまってるんだろう。
キュ、という音と共にシャワーが止まるのを合図に目を開けて……息が止まりそうになった。
「りょ……」
「ん?」
涼太の髪が、戻ってる。
向日葵のように明るく艶めく黄の髪は、間違いなく彼のもの。
シャワーで濡らしたのか、毛先からぽたりぽたりと流れる水滴が、どこか艶かしい。
「か……か、み」
いつの間に。
私のシャンプーが始まる時には、間違いなく黒髪だった。
「あー、やっと外せたっスわ。中でぺったんこになってたから、外したくなかったんスよね」
だから、なかなか外さなかったんだ……ぺったんこだったの、見てみたかったな。
それにしたって、いつもの彼に戻っただけだというのに、この破壊力はなんだろう。
無駄な肉のないフェイスラインを伝って落ちる水滴にも目を奪われてしまって。
「みわ?」
「あっ、え、うん、お疲れさま」
……何想像してたんだろう。
万年発情期の動物みたいだ、こんなの。
彼を見て邪な事を考えてしまう自分があまりに恥ずかしくて。
無だ、無にならなきゃ。
トリートメントやコンディショナーと一緒に、この汚れた気持ちも流してしまおう。
「はい、おしまーい」
残った水分までしっかりと絞って貰ってしまって、指一本すら動かさないで終わってしまった。
「ありがとう……あの、私もやらせてくれる?」
「みわが洗ってくれるんスか?」
「うん……」
やって貰ってるばかりなのは嫌で、思わずそう申し出たものの……なんだか、緊張してきた。