第80章 進展
「みわ、さっきからガン見」
「えっ、あっ、あの、ごめんなさい」
謝っておきながら、目が離せない。
これがあんなに大きくなるなんて……とか、訳の分からない事ばかり考えてしまう。
「いーんスよ、コレはみわのだから」
覗き込んで来た瞳と視線が絡んだ……と思った瞬間、今度は唇が絡む。
「ん……っ」
涼太の腕が私の腰に回り強く抱き締められて、足が少しだけ浮いた。
身体が密着して……腹部に当たっている彼のモノが、みるみるうちに形を変えていくのを感じる。
「んん……っ」
待って、待って。
何のこころの準備も出来てない!
更に、頭も身体も目覚めてなくて、混乱状態。
「りょう……っ、まって」
「んー?」
「あっ、あの……髪! 髪、なんだけど」
「髪がどーしたんスか?」
咄嗟に思いついた話題を口にしたんだけれど、涼太は話半分って感じだ。
「それ、染めたんじゃ、ないよね?」
おかしな質問だというのは自覚してる。
ウィッグだと聞いていたのにも関わらず、染めたかどうか聞くなんて。
「え、もしかしてセンパイから聞いたんスか?」
「……へ?」
涼太の表情がガラリと変わった。
いたずらっ子の顔から、まるでいたずらがバレて怒られている時のような顔。
センパイ……笠松先輩から、何を聞いたって言うんだろう?
ここ最近のやり取りを思い返してみても、思い当たる事がない。
「聞いたって、何を……?」
涼太は、ハッと目を見開いて、口を手で覆った。
「オレもしかして今、墓穴掘った?」
「……私は笠松先輩からは何も聞いてない、けど……やっぱりそれ、染めたの?」
「あーいや、ギリで染めてはないんスよ、これはホントにウィッグ。ただ、そうなるまでがあんまりカッコ良くない展開だったもんだから……」
涼太はしょぼんと耳を垂らした犬のように、元気がなくなってしまった。