第80章 進展
うぎゃっ、とかなんとか、色気とは無縁の声が出た気がする。
そこにあるはずなかったものがあった時の驚きとでも言いましょうか、とにかくもうビックリしてビックリして。
「ははっ、なんでそんなに驚いてんの?」
「だっ、だって、だって、ね、ね、寝てた!」
さっきの比じゃない位に心臓は脈打って、その勢いのまま口から飛び出してしまいそうだ。
「んーまあ、目が覚めたんスよ、ちょうどね」
……涼太はいつから目を覚ましていたんだろう?
思い起こしても、確信出来る材料がない。
全く気がつかなかった。
でも涼太のこの笑い方……きっと、ずっと前から起きてたんだ。
……ということは……私が服を着ないで歩き回ってたの……見られた?
「涼太、さっき、私のこと……見た?」
「ん? 見てないっスよ」
「そ、そうなんだ……良かった」
お腹の底から安堵のため息が出た。
良かった……あのみっともない姿を
「うん、みわがお尻をぷりぷりさせてベッドから降りてくのなんて全然見てないっスよ」
「み、み、み!?」
「ぷっ、見てないって」
肩を揺らして楽しそうに笑う姿は肯定以外の何者でもない。
「忘れて! 忘れて!」
やっぱり、面倒臭がらずにちゃんと洋服を着るべきだった。
裸を見られたのは勿論恥ずかしいんだけれど、それ以上に横着した自分がみっともなさすぎる。
もうこれ以上思い出して欲しくなくて、俯きながら涼太の肩を押し返そう……として、視界に入ってきたものに視線を奪われてしまった。
そう、でした。
えっと、えっと、ふたりでそういう事をして、服も着ずに、眠っていたのでした。
「おーい、みわ?」
男のひとだから当たり前なんだけど、ついてるのが当たり前なんだけど、当たり前なんだけど、当たり前なんだけど……
「みわちゃーん」
「ふぎゃ!?」
大きな手にお尻を撫でられて、飛び跳ねながら自分も何も着ていない事をようやく思い出した。