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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第80章 進展


この感触……ウィッグ……なんだよね?
自分では付けたことがないから、どういうものなのか分からない。

ちょっと触れるだけのつもりが、生え際を見てみたくなってしまって。

そっとおでこに手を当てると、聞こえていたいびきがピタリと止まった。

「ん……みわ……?」

「っ!」

まさかの反応に、急いで手を引っ込めた。
ぐっすり眠っているようだったから、少し髪を触るくらい大丈夫かと思った私が甘かった。

ごめんなさい、そう言おうとしたら……涼太はまた寝息を立て始めた。

び、び、びっくりした……寝言、だったのかな。
何故か酷い罪悪感を抱きながら、心臓がバクバクしてる。

これ以上余計な事はするまいと、逃げるように脱衣所へと飛び込んだ。

これまた、脱衣所はとても豪華で広い。
大理石……に見えるけれど、本物なのかな……。

水道の脇に置いてあるアメニティグッズは、私でも分かる有名ブランドの物。

お風呂上がりにきちんとお手入れしようとこころに決めて、バスルームへのドアを開けた。

「……わ」

広い広いバスルーム。
タイルは濃いブラウン系の色で統一されていて、高級感がある。

奥にはドドンと大きな浴槽。
丸い形のそれには既に湯が張ってあり、赤い花びらが無数に散っていて……更に、浴槽の真横の壁は一面が窓で、ガラスの向こう側には東京の夜景が広がっている。

まるで、映画の中の世界だ。
いつも気にすると涼太に怒られてしまうけれど、本当にいくらかかっているんだろう。

シャワーを浴びて、ささっと出よう。
不思議と冷たさを感じない浴室のタイルに足を踏み出して、後ろ手に浴室のドアを閉めた。

……と思ったけれど、何かに突っかかって、ドアが閉まらない。

何かを挟んでしまったかもしれないと振り返ると、視界を占領したのは、透き通るような肌と艶めく黒髪。

「なーに、してんスか?」

その瞳は、蜘蛛の巣にかかった獲物を見定めるかの如く。


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