第80章 進展
「いつも思うけど……涼太っての本当に視野が広くて、優しくて、すごいね」
なんて思いやりに溢れたひとなんだろう。
……そう思ったのに、涼太には軽く笑い飛ばされてしまった。
「逆っスよ、逆。自分で言うのもアレだけど、オレは結構冷たいから。0か100って言うの? 中途半端な関係の人間は、いらないんスよねえ」
「そう……なの?」
……これは、時々垣間見える、涼太のこころの中の闇の部分。
彼の周りにはあまりにも人間が多すぎて、きっと数え切れないくらいの取捨選択があった結果の思想だろう。
でも、そんな事関係なく、涼太は優しい。
自覚はないみたいだ。
「……涼太は、優しいけどな」
涼太がうんと言わなくてもいいんだ。
私は分かってるから。
涼太の優しさ、これ以上ないくらい、受け取ってるから。
……それにしても、ですよ。
すんなりと手に馴染む感触。
ピンクベージュの上品な色合い。
私、こういう物には全く詳しくないんだけれど……これ……
「これ、物凄く高いんじゃ……」
「んなコトないっスよ、みわに似合うかと思って」
サラッとそう言われて、それが本当なのかどうかも、私には判別出来なくて。
「あの、ありがとう、嬉しいんだけど、私前にもリュック貰ったし、勿体無いもの、もうそんなに、あのね」
アワアワと慌てるだけで、うまく言葉が出てこない。
「あれは、普段使い用でしょ? これは、お出かけ用。分かるっスか?」
「う、う」
「なんだっけ、よく言うじゃないスか、BCG? TPP? USJ?」
「……もしかして、TPO?」
「あーそれそれ、多分それっスわ。結婚式で水着を着ないっスよね? ウェデイングドレス、着るでしょ」
「え、うん」
「おしゃれも一緒。どこに行くのか、何をするのか、誰と会うのかで着る物も持つ物も違うんだから、それはムダ遣いとは言わないんスよ」
……うぅ。