第80章 進展
普段、大きな買い物をした時に入れてもらうような紙袋とは厚みの違う、しっかりとした紙質の袋。
中に入っている巾着を引き出すと、中身が何なのか、ちょっとだけ想像出来た、かもしれない。
口の部分を緩めて、中を覗くと……やっぱり。
「これ……鞄、だよね?」
手を入れると、柔らかい皮のような手触り。
ゆっくり袋から出すと、淡いベージュ寄りのピンク色の鞄が顔を出した。
形は……ああ、うまく説明出来ない。
少し横長になっていて、手すり……違う、持ち手が付いていて、持ち手の付け根のところ、ぐるぐるってなっていてとってもおしゃれなの。
……
「……涼太、こんな素敵な鞄……私詳しくなくて、ちょっと色々教えて貰ってもいい?」
「いいっスよ、分かってるって。これね、スムースカーフスキンとスエードカーフスキンで出来てて、ちょっとお手入れもしなきゃなんスけど、頑丈で質は良いし、みわならちゃんと大切にしてくれそうかなって」
「カーフ、スキン……」
聞いたことのない単語だ。
紙袋の中に、お手入れ方法が書かれた小さな冊子が入っているのを見つけた。
熟読しなきゃ。
「これ、ロングショルダーにもなるし、クロスボディでもハンドキャリーでもイケるんスよ」
「……えっと」
「あー、ショルダーバッグにもなるし、斜め掛けも出来るし、普通に持つのも出来るってコト」
「ご、ごめんなさい、ありがとう」
「コンパートメントもゆったりしてるし、このシグネチャーのキーホールロックが可愛いかなって思ったんスよ」
「ま、待って」
暗号だ。
ファッションには疎いという自覚はあったけど、こんなにも何にも知らないなんて。
涼太は、こんな私を馬鹿にする事なく、ゆったりとした口調で鞄の説明をしてくれた。