第80章 進展
みわがまるで深呼吸のように深い息をしたのに気が付いて、意識がこっちに戻ってきた。
「……りょうた、無理、しないで」
眉が下がったこの顔は、心配されてる証拠。
こんな真っ最中に、余計なコト考えてどーする。
「ごめん、違うんスよ。もう大丈夫。ごめんね」
「ほんと……? あっ……ン」
「可愛い、みわ……」
深く埋め込むごとに甘くなる声、段々とトロけていく表情……耐えがたいほどの快感を受け止めてくれるこの小さな存在が、愛しすぎて。
集中しなきゃ、そう思うのに、あのヒトが言ってた言葉が脳裏をチラつく。
「……一番の、方法?」
「あはは、ごめんごめんそんな深刻にならないで! あまりに真剣そうな顔してたから」
「そう……っスよね、そんな方法、あるわけないっスね」
「妊娠だよ」
「……にん、しん?」
「そ。妊娠するとね、身体はもう他の男の精子は受け付けないの。もう、その男の子どもを産むためだけに身体は変わっていくんだよ。
それってすっごい独占、じゃない?」
「……」
「おーい、黄瀬君?」
「あ、すんません……すげー、斬新だったから驚いて」
「あはは斬新ね、確かに! でもね、愛してる人の子どもを産めるのは、幸せな事だよ」
「っ、は……涼太、本当に……ぐあい、わるくない?」
「……だーいじょうぶ、だって」
考えたこともない、って言ったらウソになる。
この、お腹の中に。
すべすべのお腹を撫でるように触れると、みわは不思議そうな顔をしながらも、快感に腰をくねらせた。
……ダメだダメだ、何考えてんだ。
ちゃんと、分かってる。
大丈夫、ちゃんと理性が勝ってる。
みわの未来を邪魔するような事だけはしちゃいけないと。
真っ暗な中で唯一彼女が見つけた光を、遮るような事だけはしちゃいけないと。
ちゃんと、分かってる。