第27章 海常祭
学園祭・海常祭当日。
9月とはいえまだまだ夏の暑さが残っており、汗で濡れた肌に制服のシャツが張り付くのが不快で仕方ない。
強い陽射しの中、みわっちと一緒に朝から校門付近でビラ配りをする。
男性が苦手なみわっちだから心配していたが、1対1で向き合ってゆっくり話すわけではないし、頑張れると言っていた。
しかし無理をするタイプなのは重々承知している。
必ず彼女が視界に入る位置にいることにする。
ビラ配りはなかなかに面倒臭い。
客は足を止めて、オレと一緒に写真を撮らせて欲しいだの、学園祭に関係のない話を振られてばかりで、早く終わらねーかな、とイライラした。
それでも、昼前には全て配り終わった。
終わった時点で自由にしていいとの話だったので、みわっちと一緒に校内を回り始めることにする。
しかし、どこに行っても写真だ握手だサインだと、人が集まるのが絶えない。
みわっちは、その度にそっとオレの側を離れ、オレが対応しているのを見守ってくれていた。
……オレはみわっちとゆっくり話しながら回りたいのに。
「ごめんねみわっち、こんなんばっかりで」
「大丈夫だよ。大変だね」
みわっちは、わざとオレと距離を取って歩いている。
オレは距離を詰め、みわっちの手を取った。
「えっ……手、繋がない方がいいんじゃ……」
「言ったでしょ。オレ別にみわっちと付き合ってるの、隠すつもりないっスから」
少し照れた様子で俯くみわっちと、彼女の歩幅に合わせて歩く時間。
それだけで楽しかった。
「おーい黄瀬、神崎! 食ってけよ!」
森山センパイだ。
ユニ姿とは全く異なるエプロン姿が面白い。
センパイ達は3人とも同じクラスだったはず。
笠松センパイのエプロン姿を想像しておかしくなる。
センパイのクラスの模擬店は、たこ焼き・お好み焼き・焼きそばを作っているらしい。
「みわっち、食べて行こ!」
「うん!」