第27章 海常祭
新学期に入ってから、変わった事がある。
黄瀬くんが授業をちゃんと聞いている時間が格段に増えた。
寝ている授業もあるにはあるけど。
それに、分からない事があると、授業が終わったら聞いてくるようになった。
一体どうしたと言うのか。
「黄瀬くん、最近居眠り減ったね」
失礼を承知でハッキリ言う。
「いや〜、こないだの補習騒動でさすがに懲りたっスわ。
中間も期末もあるし、毎度みわっち先生のスパルタ家庭教師にお願いしてたら、死んじゃうっス」
そう言いながら嬉しそうに笑う黄瀬くん。
むむ、ちょっとカチンときたぞ。
「分かった。もう黄瀬くんには教えてあげないから!」
そう言うと、サッと顔が青くなる。
本当に表情豊かな人だな。
「ウソウソ! みわっち先生頼りにしてます! またよろしくお願いします!」
「冗談だったんだけど……いいよ、ちゃんとお勉強する事は良いことなんだから」
……2人、目が合って思わず笑い合った。
後は、気になっている事があった。
夏休みに男に私を襲わせた女生徒達。
彼女らが全員、退学したというのだ。
具体的な話は何も分からない。
あんな事をしたのだから、然るべき処分なのかもしれないけど。
黄瀬くんはその事について何も語らない。
逆恨みされないのは助かるが、裏で大きな力が働いている気配がしてなんだか少し不安。
海常祭も翌日に迫り、クラス全体がどことなく浮き足立っている。
私たちは朝から校門付近でビラ配りをするだけなので、気楽なものだけど。
天気予報は幸いにも晴れ。
学校での1年に一度の大きな祭りが始まろうとしていた。