第80章 進展
待って……テーブルの上は完全にパーティー仕様。
「あ、ハラいっぱいっスか?」
「ううん、そうじゃない……んだけど……」
さっき、豪華なレストランで豪華なディナーをたっくさん頂いたよね?
贅沢すぎるデザートまで、いっぱいいっぱい食べたよね?
「きっ、黄瀬涼太さん!」
「ん? なんスか?」
「あの、あの、ちゃんとお話しておかねばならぬ事がございます!」
「あんまり金使うなーってヤツっスか? いいじゃないスか、年に一度の誕生日」
「う」
まだ質問すらしていないのに、回答まで受け取ってしまってぐうの音も出ない。
年に一度って言うけど、一度じゃない! 一度なんてもんじゃないもの!
だって、去年のクリスマスは一体どうだった?
プレゼントまで貰った上に、宿泊は客室露天風呂付きのお部屋で、豪華な食事付きで、客室露天風呂付のお部屋で、客室露天風呂……露天、風呂で……
「みわ、顔赤いっスよ」
「わっ、な、なんでもないです!」
「なんでもないんなら、いいんスけど」
くつくつと笑う姿は、全部お見通しみたいで。
「ねえ、本当に、涼太」
「あのね、みわ。オレはね、自分が使いたいと思ったものにしか、金は使わない主義なんスよ」
「う、うん……」
ゆっくりと椅子に腰かけた涼太が、今までの雰囲気とは違ってあまりに穏やかに話し出すから、思わず言葉を呑んだ。
涼太はおしゃれだし、一見物を沢山持っているように見えて、確かに彼の部屋は予想よりも物が少ない。
物にあまり執着がない、と以前聞いた。
きっと、それが大きな理由なんだろう。
「普段はそんなに使う事ないんスけど、その代わり、大事だと思った事には惜しみなく使う。今までもこれからもそれは変わらないから、覚えておいてくんないっスか」
涼太の主義を否定したいわけじゃないの。
それは本当に彼の自由だし、だとするとこれ以上何も言える事がなくって……。
「……はい」
「家計が一緒になってから揉めるよりは先に言っとこうと思って」
……ん?