第80章 進展
「みわ、すっげーガッチガチ」
「だっ、だって」
涼太に連れて来られたホテルは、やっぱりというかなんというか……物凄く豪華で。
駅からもそれほど遠くなくて、ロビーには家族連れなんかも多くて、シンプルな感じかと思いきや……
エレベーターが高層階へ向かうにつれて、どんどんひとが少なくなって、降りる頃には私達以外のお客さんはいなくなってた。
静まり返った廊下を抜けて、辿り着いた部屋……間接照明の優しい明かりが広がる部屋は、とにかく広くて。
私が泊まった事のあるホテルとは大違いだ。
もう、本当に私にお金を使って欲しくないんだけれど、どうしたら伝わるんだろう!?
私、完全に場違いだよ!
正面には大きな窓。
入り口からでも、綺麗な夜景が見えるのが分かる。
窓際には大きなソファ。
ソファとは別に、テーブルセットも置いてある。
この部屋、一体何人で利用する設定なんだろう……と思ったけれど、ベッドはとっても大きいサイズのものが1台……言わずもがな、2人用……なんだよね。
天井や壁紙が薄黄色だからか、間接照明でも部屋がとても明るく感じる。
涼太は私の手を解放して、荷物を椅子の上に置いた。
「歩いたら喉渇いたっスね。なんか飲もっか」
「あ、うん」
そう言えば、お喋りしながら歩いてきたから、喉がカラカラだ。
自動販売機、あったっけ?
ホテルの案内図を探そうとして、テーブルの上に置いてあるバインダー類に挟まった書類を読んでみようと思ったら……ドアをノックする音が響いた。
「え? 誰かな?」
もしかして、ファンの子が追いかけて……?
なんて、一瞬ドキリとしたんだけれど、涼太は驚く様子もなく、ドアを開けた。
そこに居たのは……ウエイターさん……?
彼が押してきたカートの上に乗っているものを見て、本日何度目かの仰天。
カートの上には、お酒?の瓶にグラスが2つ、おつまみ?のような小皿がいくつかと、豪華なフルーツが沢山乗った盛り合わせ、それに……ケーキ。
涼太はテーブルに移されたそれを確認して、爽やかにお礼を言った。