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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第80章 進展


尻尾を振った大型犬だったり、気まぐれないたずら猫だったり。

社交的な顔の裏に、行き場の無い孤独が垣間見えたり。

このひとは本当に、どれだけの顔があるんだろう。
どれだけのものを抱えて来たんだろう。

そして私は、その中のいくつを……知っているんだろう。

その全てを受け入れたいと思うのに、すでに翻弄されすぎてあっぷあっぷだ。

現に、今も……

「……、っ」

触れるか触れないかの微妙な触れ方。
唇を唇がそっと撫でるように重なるキス。
ずるい、いつもずるいんだ、これは。

「涼太、待って、こんなとこで……だめ」

肩を押し返したら、彼も分かってくれたのか、すんなりと身を引いて……くれたと思ったのに、再び、ぐいと顎を持ち上げられて。

「あ、っ」

時間にしたら、きっとほんの数秒だった筈。
さっきまでのじゃれ合いとは対照的に、唇はすぐに離された。

一気に深くなったキスに驚く暇もなくて。
でも、一瞬、ほんの一瞬だけ触れた……舌が、いとも簡単に私の中の欲情を叩き起こした。

「も、もう、だめだからね、こんなとこで」

涼太の顔が見れない。
叱ったつもりなのに、説得力なんて全くなくて、少し震える手で小さなチョコレートを口にした。

甘いチョコの中からビターなクリームがとろりと流れ出して、先ほど彼と触れ合った舌の上を滑っていく。

それは、何故だかまるで先ほどまでの口づけのようで……

……だめだめ! うう、勝手に発情していやらしい事を思い浮かべてしまった自分を呪いたい。

「美味しいっスか、それ?」

そう言ってこちらに向けたのは、いつも通りのぽかぽかおひさま笑顔。

そんな風に無邪気にされたら、もう怒ることも出来なくなってしまう。

「ん、すごく……美味しいよ」

自分から聞こえる心臓の音が大きすぎて、集中出来ないよ……。


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