第80章 進展
「みわはさ」
「うん?」
丁度カップに口をつけた時に問われて。
でも、次の問いはなかなか飛んでこなくて。
「涼太、どうし……」
「大阪で、どんな事してんスか?」
「あ、大阪で?」
なんだ、凄く言い辛い話なのかと思ったら……大阪での私の活動のこと?
「本当に、大したことはしてないんだよ、基本的にはデータ付けと、トレーニングの提案。それも、マクセさんの補佐が大前提だから……気になったことがあったらマクセさんに相談して改善策を練って、ってそういう感じ」
とは言え、本を読んで勉強するのとは比べものにならないくらいの経験をさせて貰っている。
文献でも電子データでもない、こころを持った選手達を身近で見ていられるんだから。
貴重な時間、一粒ですら取り零したくない。
「……他には?」
「え、他に? 他にって?」
「食事とか」
「あ、食事の提案もするよ。やっぱりウエイトが足りない選手が全体的に多い印象だし、たんぱく質と」
「そうじゃなくて、食事」
……?
「うん、食事、だよね?」
やっぱり涼太、酔ってる?
ショクジって、食事だよね?
植字……違うよね、なんか私、意味の分からないこと、言っちゃった?
「みわが食事を作ることはあるのって、聞いてるんスよ」
「……へ?」
私が、食事を?
「選手に、ってこと……?」
「他に、どういう意味があんスか」
「あ、そうだよね……別に、作ったりはしないけれど……?」
あれ、なんか怒らせちゃってる?
待って、私さっきからおかしなこと、言ってる?
「……いやごめん、なんでもないんス、ごめん」
涼太は柔らかい髪をくしゃくしゃと掻いてから、もう一度ごめんと言って紅茶を飲み干した。