第80章 進展
目の前を音も無く流れる光の奔流から目が離せないまま、ふたりは会話をしていた。
どのお料理が美味しかったとか、どのお酒が口に合ったとか。
そう言えば、デザートってどんなのだろう?
何気なく聞こうとしたタイミングで、丁度背後からお待たせ致しましたの声。
振り向くと……店員さんが押してきたのは、アンティーク調のティーカート。
上の段には、実に十数個のスイーツが所狭しと並べられている。
「え……っと、何これ涼太、あの、すごいんだけれど……」
「美味しそうっスねえ!」
突然目の前に飛び込んで来た甘い情報量に、脳の処理が追いつかない。
そもそも基礎知識がなく、どれがなんのお菓子か全然分からなくて。
「ご説明をさせていただきます」
店員さんは、そう言って端からお菓子の名前と味の概要を説明してくれる。
どれも華やかで美味しそうで、さっきまで満腹近かったはずなのに、まだまだ食べれそうに感じるから不思議なもので。
「迷っちゃうな……」
この中からひとつを選ぶというのは、なかなか困難。
甘そうなそれもいいし、甘さ控えめなそれも……なんてやっていたら、永遠に終わりそうにない。
カヌレっていうのも食べた事がないし、マカロンも名前だけは聞いた事があるから、きっと美味しいんだろう。
日常的に目にするお菓子でさえも、まるで別世界の食べ物のように美味しそう。
その他に、カップに入ったゼリーみたいなスイーツもあるし……ううう。
散々悩んで、先ほどまで沢山の食事をしていた事も考慮して、さっぱり系のグレープフルーツゼリーのようなスイーツを選ぶ事にした。
「これ、お願いします」
「かしこまりました」
可愛らしいカップに入ったデザートは、スマートな所作で私の前に運ばれてくる。
涼太は何を選ぶのかなとカートに視線を戻すと、店員さんも涼太も私の様子を窺う表情。
「……えっと、何か……?」
「他はどれにするんスか?」
「えっ? ひとつじゃ、ないの?」
「お好きなだけお選びください」
「ええっ!?」
まさかのその発言。
このお店に来てから、驚きっぱなしだ。
結局、涼太と店員さんにあれやこれやとお薦めされて、私のテーブルには7個ものスイーツが並べられたのであった……。