第80章 進展
「綺麗……」
夜空に瞬く星とは違う輝き。
無機質ではあるけれど、光の向こう側には自分とは違う人間が間違いなく存在しているという、不思議な安心感。
こんなに見渡せる場所があるなんて。
高い所はちょっと怖いけれど、それを気にさせない程の美しさ。
部屋は薄暗くなっていて、窓際にカウンターテーブルのようなものが設置され、横並びに座れるようになっている。
それとは別に、室内には向かい合わせのテーブルセットもあって。
お客さんの希望に合わせて利用出来るようになっているんだろう。
「窓際でいいっスか?」
「うん……!」
こんな美しい夜景を見ながらデザートが食べられるなんて、本当になんて贅沢なんだろう。
座面が柔らかいクッションのような素材の椅子に腰かけた。
「みわ、酒に強いんスね」
「え、そう?」
「だって、酔ってないっしょ」
涼太は頬が紅潮しているけれど、私はどうだろう?
酔ってない、っていう事はない。
ちょっとふわふわする感じがあるし……。
「酔ってると思うよ、なんだかふわっとするもの」
「なんていうかさ、小説とかでよくありがちな、1滴でも飲んだらバタッと倒れちゃう的な、そういうんじゃないなって思うんスわ」
「バタッと……そ、そうだね、そこまでは酔ってないかな……」
私が好んで読むジャンルに恋愛小説がないからか、あんまりピンと来ない。
やっぱり、女性はお酒に弱いというのが可愛いポイントなのかもしれない。
「ごめんね、可愛げがなくて」
「何言ってんスか、それ全然カンケーねーし。てか前にマクセさんとかと参加した合宿で酔った時、相当飲まされたってコトっスよね」
そう言えば、そんな事があった。
あの時は、記憶が朧げになる程酔ってしまった筈。
確かに、ジュースだと思っていたし、勧められるままにかなりの量を飲んだような記憶が……。
「そうだったと思う……気を付けるね」
「マジで、飲み会とかは気を付けるんスよ。悪いコト考えてるヤツなんてゴロゴロいるっスからね」
大人って、大変なんだ……。