第80章 進展
ほんのり色づいた頬が、凄く色っぽいんだけれど……そんな悠長な事も言ってられない。
結構飲んでいるし、相当酔ってしまったんだろうか。
こういう時って、どうしたらいいんだろう。
アルコールを瞬時に体内から抜く方法……なんてあるわけないよね。
「涼太、大丈夫? お水、貰おうか」
「ん、ヘーキ。酔ってないっスよ」
そうは言ってるけれど……やっぱり心配で、店員さんに声を掛けてお水を持ってきて貰った。
静かにテーブルに置かれたグラスを見て、涼太は柔らかく微笑んだ。
「みわは、なんだかんだガンコなんスよね。思い通りになりそうで、なかなかなんないの。そーゆートコも、好きなんスけど……」
「そ、そう、そうかな?」
なんか、恥ずかしくなってきた。
その瞳に弱い。
あんまり真っ直ぐに見つめられると、身体の真ん中が溶けてしまいそうで。
私の分もお願いして良かった。
慌てて冷たい水を口に含む。
「ベッドん中なら、結構思い通りになるんスけどね」
「んぐっ」
危ない、吹き出すところだった!
やっぱり涼太、酔ってる、酔いすぎてる。
「あ、あの、水、水飲んで!」
はは、そうスねと言って、涼太は水をぐいと飲んだ。
上下する喉元を見て、またなんか変な気持ちが……私も、酔っ払っちゃってるのかな。
大きな手は、グラスをテーブルに置いて……そっと私の頬に触れた。
「あー……キスしたいっスわ」
「はい!?」
ちょっ、え!?
「すんげぇしたい。抱きたい。メチャクチャにしたい」
今なんか、爽やかにさらっと凄い事を言われた気がする。
店員さんが近くにいなくて良かった。
って、そうじゃなくて!
「ちょ、ちょっと待って涼太、酔ってるよね、すごく酔ってるよね?」
「酔ってないってば」
ゴツゴツした親指が私の唇を撫でて、手はすんなりと離れていく。
「夜のお楽しみ、っスね」
その爽やかすぎる微笑に、それ以上何も言えなくなってしまった……。