• テキストサイズ

【黒バス:R18】解れゆくこころ

第80章 進展


「そんなオレに、教えてくれたのはみわなんスよ」

店内には沢山のひとがいたと思うのに、なんだかとっても静かに思える。
普段行くようなお店の喧騒がここにはない。
注文すれば目の前で焼いてくれるシェフも、客の雰囲気を感じ取って、そっと席をはずしてくれている。

私こそ、色々な事を教えて貰っているのにな。

「みわが教えてくれた。大切なヒトってどういうものなのかを。オレにもそんなヒトが出来るんだってことを」

涼太はそっとワイングラスを傾けて、明るい黄金色の液体を口にした。

「今まで色んなコトがあったっスけど……その度に後悔したりしてたんスよ、最初は。もっとああしておけば良かったとかこうしておけば良かったとか」

ちらりと脳裏に浮かんだのは、刺傷事件や強姦事件……きっとあれは、涼太にも大きな傷を刻み付けたはず。
自分を責めて責めて……あんな辛そうな姿、もう絶対にさせたくない。

「でも、悩んでるだけじゃなんにも上手くいかなくて。悩んで悩んで拗らせて出した結果が、結局は的外れだったりさ」

涼太が、責任を感じてバスケを辞めると決めたあの時……彼はどんな気持ちだったんだろう。
彼にとって、他の何にも代えられない大切なものを捨てるって、どうやって決断したんだろう。

……うう、さっきからなんだろうこの気持ち。
ぐっと拳を握っていないと、暴走してしまいそうだ。

「それにみわは、なんていうか……ほっといたらするっとどっかに行っちゃうみたいな、そんな感じがするんスよね。だから、グダグダ悩んでるよりもまず動くべきだって思ったし」

「う、ご、ごめんなさい」

私って、そんなに鉄砲玉みたいな生き方してる……かな?
……してる、のかな。

「みわはさ……全部さ……」

そう言うと、涼太は手の甲を額に当てて、俯いてしまった。
心なしか呂律が怪しい気がする。



/ 2455ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp