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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第26章 オンナノコ


電車は会社帰りのサラリーマン達で混雑していた。

やっぱり知らない男性は全くダメだ。
目を合わせるのもままならない。

青峰さんにも、失礼な事をしてしまった。
勿論連絡先は分からないから、後で桃井さん経由ででもちゃんと謝らないと。

でも、今はまだゆっくり携帯を弄れる余裕がない。

震えが止まらない指を強く握りしめ、ぐっと堪える。

肌の露出を控えたくて、夏でも長袖の服は必ず持ち歩いている。

冷えないようにと思われがちだけど、私のこれは人と肌が触れ合わないようにするためのものだ。

人とぶつからないスペースを確保して、目的地への到着を待った。

家まで走って帰ったらきっと汗だくになる。
さっとお風呂に入ってすぐに寝てしまおう。

黄瀬くんにも連絡しなきゃ。
ちゃんと帰れたか連絡欲しいって言ってくれてたから。

黄瀬くんの事を考えると、胸のところがほわんと温かくなる。
彼のバスケを見ている時とは、全然違う気持ち。

彼からは数え切れないほどのものを貰っている。
私は、彼に何かをあげられているんだろうか。



気付いたら、ボーッと考え事をしていた。
聞き慣れた駅名のアナウンスが聞こえ、慌てて電車を降りる。

冷房の効いた電車内とは違い、熱を孕み湿り気を帯びた空気が全身に纏わりつき、不快だ。

閑散とした構内を抜けて改札口を出ると、辺りはすっかり闇に包まれていた。

「おかえり」

走り出そうとしたその瞬間に横から声を掛けられ、一瞬反応が出来なかった。

「黄瀬……くん!? あ、え、ただいま……」

「遅かったっスね。荷物持つよ」

手を差し出されたけれど、何を買ったかが丸見えになってしまうのは恥ずかしかった。

「……軽いから大丈夫。ありがとう」

「そっスか? じゃあ送るっスよ。もう暗いし」

黄瀬くんが自然な動作で私の手を取り、歩き出した。

「こんな時間に……どうしたの?」

「ん〜ちょっと、なんとなく散歩って感じっス」

嘘つき。
部屋着のまま慌てて出てきましたって丸わかりの格好の癖に。

「はは、ムリがあったっスかね」

「……そうだね」

「青峰っちからね、連絡あって。2人が変なのに絡まれたって」

青峰さんが。
それで急いで迎えに来てくれたんだ。

「ごめんなさい、ありがとう……」




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