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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第80章 進展


「涼太は……すごいね」

ぽつんと呟いた小さな声は、つやつやしたテーブルに吸い込まれていくみたいだ。

「ん? 何がっスか」

「なんて言うか……迷いがない、っていうか……」

いつも、涼太の言葉に気付かされる。
いつも、涼太の言葉に助けられる。
背中を押して貰える。

「えー、オレ悩みがないように見える?」

「ちっ、違うの! そうじゃなくて……!」

「はは、分かってるっスよ」

楽しそうに笑う涼太の顔はほんのりと赤い。
風邪を引いた時とも、試合の時とも違う。
酔って……るのかな。

「迷いがないかぁ。確かに、昔に比べたら迷うコトが少なくなった気がするっスわ」

「それは……どうして?」

そう聞いてから、慌てて口を噤んだ。
そんなに軽率に聞いちゃいけない事だったかもしれない。

涼太に悩みがないなんてカケラも思っていないけれど、この話の流れだとそう誤解されてもおかしくないもの。

私の知らない中学時代にも沢山悩んだと思う。
一緒に歩んで来た高校時代だって、数えきれない程の葛藤や悩みを抱えていたと思うし……。

「お待たせいたしました」

一瞬出来た会話の空間に合わせて、お酒が運ばれてきた。
表面がデコボコしたグラスに注がれているのは、少し濃いめの黄色の液体。
そしてグラス上部に、赤い層が出来ている。
更に、黄色と青の星型のゼリーが浮かんでいて……

「……可愛い」

店員さんは、ありがとうございますと優しく言って、去っていった。

バーボン? とか、赤ワインとレモンが入っている……と説明されて。レモン以外の知識がないから、どんな味かがピンと来なくて……。
とりあえず一口飲んでみることにした。

「ん、美味しい」

知識があろうとなかろうと、私に味を表現する才能はないみたいだ。
コクのある甘みと一緒にレモンの酸味……なのかな、そのバランスがとっても合っていて。
更に……うーん、本当にうまく言えないけれど、とにかく美味しい。

おまけに、タイミング良く会話の流れを切って貰えて、ホッとした。

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