第80章 進展
それから、色んなものを食べて、色んなお喋りをした。
……ちゃんとシェフの方が説明して下さるんだけれど、知らない事ばっかりで。
お肉だけじゃなくて野菜も焼いて貰ったりしたんだけれど、どうして焼き方ひとつでこんなに美味しいのかと、料理の奥深さを身を以て味わった気分だ。
そして……
「みわ、まだ飲めそうっスか?」
「あ、うん」
なんだかんだとさっきからお酒を飲んでいる。
美味しいお料理を食べていると、すんなり飲めるのが不思議。
お肉にも合う日本酒があると言われて飲んだお酒も美味しかった。
合う合わないがあるということ自体、初めて知った。
まだまだ知らない事ばっかり。
少しずつ、色んな事を覚えていきたいな。
涼太から、飲みたいのある?と聞かれても、お酒は全くの無知で……。
困っていると、涼太は店員さんを呼んでくれた。
「お客様のお好みに合わせてお作り致します」
そう言われたんだけれど、最初はなんのことか分からなくて。
まさか、メニューにないお酒を作って貰えるなんて思ってもみなくて。
タジタジしながらも、柑橘系のさっぱりとした風味のお酒を作って貰うようにお願いした。
「ほー……」
思わず漏らしたおかしなため息に、涼太は肩を揺らして笑った。
「大丈夫っスか?」
「う、うん、なんかあまりに大人の世界って感じで」
「そうっスかねえ」
涼太は、私みたいにオドオドしている様子もない。
すっかり大人って感じだ。
ますます別世界のひとって感じが……。
「みわは難しく考えすぎなんスよ。確かにハタチになって出来るコトも増えたっスけど、結局は自分がどうするかでしょ」
自分がどうするか……。
確かにそうだ。
今日の0時から私は20歳になったけれど、何かが劇的に変わったわけじゃない。
ただ、法律で許される範囲が広くなっただけだ。
大人になれるかどうかは、自分次第。
大人になる……ってどういう事かちゃんと分かっていなかったけれど、自分の生き方に責任を持っていくことなのかもしれないな。