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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第80章 進展


「ちょっとマナー違反かもしんないっスけど」

涼太はそう言いながら、グラスをそっと重ねた。
乾杯っていうと、グラスをカチャンと合わせているのを想像するけれど、そうじゃないんだ。

「このグラスが重なる音って、魔除けになるんだって」

涼太はその他にも、シャンパンにまつわるお話をいくつか聞かせてくれた。
シャンパンの泡を星に見立てて、【星を飲む】と表現をすることもあるとか。

シャンパンの泡のぱちぱち弾ける音は【天使の拍手】と言われているとか。

涼太は物知りだなぁ、と思ったけれど、きっとわざわざ調べてくれたことも多いはず。
今日のこの時間のために、彼の時間を沢山使ってくれたはずだ。

どうしよう……嬉しい。
まだ食事は始まってもいないのに、もうさっきから泣きそうだ。

「どう、飲めそうっスか?」

「うん、美味しい」

なんていうんだろう、表現が難しい味だ。
以前、一度だけお酒を飲んだ、というか飲んでしまったことがあるけれど、あの時とは全然違う。
マクセさんと参加した合宿、あそこで飲んだお酒は、オレンジジュースの味がした。

でも……フルーティーで、なんとも言えない苦み?渋み?みたいなものが少しあって、でもシュワッと炭酸で和らいでいるから、凄く優しいというか……

「……上手く言えないんだけれど、とっても美味しい」

「そっか、良かった」

一緒にお食事したり、お喋りしたり。
今まで幾度となく繰り返してきたのに、なんだか今日は特別な感じがする。
お酒のせいなのかな?

注文したお肉がやって来て、目の前でシェフが焼いてくれる。
ほんの小皿に乗るくらいの小さなお肉。
おすすめされたわさびで食べると、肉汁がしみ出して来て、まるで溶けるようにふわっとして……

「お、いしい」

ただでさえ豊富でない語彙力が、ゼロになってしまったみたいだ。
美味しい、美味しい以外の表現ってどうしたらいいんだろう。

そう言えば以前、合宿中に涼太が食レポをしていた動画を見せて貰ったな……あんな風に上手く言えたらいいのに。


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