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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第80章 進展


「ん……ん」

からかうようにすりすりと唇同士が擦れ合って、気まぐれに重なって、突然深くなる。

涼太のキスに、いつも翻弄される。
まるで密室での情事みたい、なんだけど……

『まもなく~、4番線に……』

「わっ!」

突然の構内アナウンスに、飛び上がらんばかりに驚いた。
唇同士の距離が開いたと思ったら、またあっという間に詰められて。

「りょ、涼太っ、電車が」

「んー、もーちょい」

「だっ、だめ、だってば」

電車がホームに入って来ない内に、最大限の力を以て抵抗した。
涼太は、形の良い唇をツンと尖らせた。

「なんでっスかー、折角変装してきたのに」

とってもご不満そうなんだけれど……

「涼太、涼太が思っているよりも隠せてないから……」

「えー、だってみわは気が付かなかったじゃないスか」

「うっ」

痛い所を突かれてしまった。
でも、元々私は街で男性をじっくりと見るような事はしないし、別に涼太の存在感が薄くて気が付かなかったわけじゃないの……。

涼太は全く自覚がないのかもしれないけれど、彼のオーラは、隠そうと思って隠せるものじゃない。

現に、全く隠しきれていないんだもの。

「あの、もう行こう、ね」

不満げな涼太を引っ張り、なんとか混雑する前に駅のホームから抜け出した。




「……ねえ、あの人カッコ良くない?」

「背高いし顔ちっちゃすぎるよね。もしかして芸能人じゃないの?」

まだ地上に出れてもいないというのに、周りから聞こえるのは涼太に注目する声。

彼は、聞こえているだろうに振り向く事すらしない。
珍しい……やっぱり、オンとオフをしっかり切り替えないと、疲れてしまうよね。

自由に街を歩く事も出来ないなんて、辛すぎる。
涼太が少しでも気晴らし出来るように、協力しなきゃ。

大きな手に導かれて辿り着いたのは、高層ビルの中にある、高級そうなレストランだった。




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