第80章 進展
午前中は講義を受けて、午後はバイトをして……出掛ける前にもう一度、あきにお手入れをして貰ってメイクも施して貰って。
待ち合わせは17時半。
20分ほど余裕を持って到着出来そう。
池袋って以前涼太と行った事があるくらいで、地理に酷く疎い。
貰ったメッセージに書いてある場所と、一緒に送ってくれた地図を何度も見返す。
ちゃんと、辿り着けますように。
電車を降りると、メッセージアプリが受信を告げた。
涼太だ。
可愛いひよこのアイコンの横に1と表示されている。
待ち合わせの変更かもしれないと思い、ホームのベンチに座って画面を開いた。
"オレもう池袋!
みわ、まだなら
ホームで待ってる!"
えっ、涼太もここにいる?
早く会えて嬉しい気持ちと、迷子にならなくて済む安心感を抱き合わせてベンチを立った。
涼太は7号車の近くに居るって。
ここは6号車、すぐそこだ。
閑散としだしたホームを見渡しても、涼太の姿はない。
もしかして、降りる駅を間違えた!?
焦って駅名表示を見上げると……池袋。
大丈夫、間違えてない。
涼太、まだ着いてなかったのかな。
次の電車なのかも。
すぐそこにベンチがあるのに気がつく。
あんまり直視出来なかったけれど、黒髪の男性が座っていたのでひとつ開けて座ることにした。
……ん?
あれ……?
なんか、ベンチが揺れてる。
それが、座っていた男性が笑っているからだという事に気がついた。
……なんか、笑われることしたかな……。
どんなひとだったのかな、あんまりジロジロ見るのも悪いかなと思って、見なかったけれども……。
なんか失礼な事をしてしまったかもしれない。
一度、様子を伺った方がいいかな。
そう思って、顔を上げようとした瞬間……
「ねえみわ、気がつかないんスか?」
そう楽しそうに笑う声は、ひとつ飛ばした席から聞こえた。