第80章 進展
「みわーおは、ぎゃっ何その顔!」
「お、おは……よう……」
朝、リビングで顔を合わせたあきは、驚いて数歩後ずさった。
あの後、思ったよりも早く眠りにつけた……んだけれど。
寝る直前まで考え事をしていたのがいけなかったのか、あれやこれやが夢にまで出てくる始末で、寝た気がしない……。
「私……そんな酷い顔してる?」
「鏡、見てきたら」
「……うん」
その足で洗面所へと足を運んで、鏡に映った自分を見て……卒倒しそうになった。
く、黒い。
目の下が黒い。
全体的に肌もくすんでいるような気すらするし、なんか唇は紫色だし、待って、待って。
どうしよう!
「すごいよね、残業続きのサラリーマンみたいな顔よね」
あきはケラケラと笑いながら、大きな紙袋をテーブルの上に置いた。
「あき、どうしたの……?」
「誕生日おめでと。これ、プレゼント」
「えっ!? いいの!?」
ほいほいと促されて、紙袋を中から覗くけれど、包装されていて中身は見えない。
「気を遣わせちゃってごめんね……ありがとう」
「なーに言ってんの。開けて開けて」
「うん!」
長辺が30センチくらいの箱を取り出すと、鮮やかな青い包装紙に包まれたプレゼントが姿を現した。
黄色いリボンをゆっくりと解いて、包装紙を開けると……
「……スチーマー?」
スチーマー、って書いてある。
小さな炊飯器みたいな形だ。
なんだっけ、これ、どこかで見た事があるような……。
「……あっ!」
あきとたまたま見ていた深夜の美容番組で特集していたのを思い出した。
温風冷風が交互に出てきたり、アロマの香りを楽しめたり、なんか色んなやり方があるんだって。
「すごい……高かったでしょう、どうしよう、こんな高価な、あっでも、これ使えば、この酷い顔も良くなるかも」
こんな高価な物……いいんだろうか。
オロオロしていると、あきは瞳を輝かせて親指を立てた。
「寝不足の顔くらい、あたしに任せな」