第80章 進展
「私の……家族、ですか」
自分でも笑えるくらい声が震えているのが分かる。
思っても見なかった赤司さんの言葉に、頭は真っ白だ。
『家族の記憶がないとは言っていたけれど、その後何か思い出したりはしたのかい?』
「い、いえ……昔の同級生から、姉がいたらしいという事くらいしか」
まさか、私の家族の事を……捜す?
頭の上には疑問符が飛び交っている。
「赤司さん……どうして、私の家族を、なんて」
言葉を選ばずに言えば、赤司さんがわざわざ私の為に労力を使う必要性なんてないだろう。
いくら友人だからと言って……。
『実は黄瀬からね、連絡を貰ったんだよ』
「……涼太から、ですか?」
『どうやら黄瀬は、持ち前のネットワークで良い調査会社を調べていたらしい。それで、うちの系列の調査会社に行き当たったという事なんだ』
赤司家系列の……って、突っ込んで聞いていいものなのかどうか。
あまりに手が広すぎて、どこまでの規模なのか全くわからない彼のおうち。
「どうして……」
『君は二十歳になったら父親を捜す、と言っていたんだって? 金銭面でも負担がかかるし、調査の質や社会的信頼がある相手なのかどうか……一口に調査会社と言っても、その実はあまりに多種多様だからね。心配したんじゃないかな』
「そう、だったんですか……」
そんなの、全然知らなかった。
でも確かに、調べよう調べようとインターネットに潜っても、調査会社のあまりの数の多さに決めかねていたのも事実。
涼太、忙しいのに……。
『うちなら質は悪くないし、もし調査で期間の延長や調査対象の幅が増えたとしても、追加料金は貰わないで調査するように手配しよう。無償で、と言ってあげられないのが心苦しいけれど』
「無償……!? とんでもないです! もうこれ以上ないくらい良い条件でご紹介頂けるのなら、是非お願いしたいです」
調査には、お金と時間がかかる事はよく分かっている。
調査が長引けば長引く程、多大な費用がかかる事も。
だから、こんな良い待遇で……本当にいいんだろうか。
『詳細はまた追って連絡するよ。良い誕生日を』
そう言った赤司さんの声は、これ以上にないくらい優しかった。