第80章 進展
『誕生日のプレゼントを、と思って連絡したんだ』
……誕生日の、プレゼント?
誰が?
誰に?
……頭の中に浮かんだ疑問、いくら考えても解はひとつしかなくて。
「え、えっと……私に、ですか?」
『他に誰がいるんだい』
「……緑間、さん?」
確かに、と向こうで笑っている声はいつもの赤司さんだ。
穏やかで、電話口では感情が読めない声だけれど……。
『誤解させてしまったかな。変な意味があるわけじゃないよ。友人として、何がいいかなと考えていたんだ』
「あの、このお電話で十分です。とっても嬉しいです、ありがとうございます」
自分の誕生日を誰かが覚えていてくれてお祝いしてくれる。
それがとってもとっても嬉しくて。
普段会う事のない赤司さんも、覚えていてくれたんだ。
その気持ちが、一番の贈り物だと思う。
だから、プレゼントなんて貰うわけにはいかないよ。
本当に、私にそこまで気を遣わないで欲しい。
そして、大切なお金を使わないで欲しい。
失礼にならないように辞退するにはどうしたら……
『実は黄瀬にも相談したんだけれどね、君はきっと受け取らないだろうって、そう言うものだから』
……私の行動パターンなんて、涼太には全部お見通しなんだろうか。
ふたりが電話で話している光景を想像して嬉しくなりつつ、私って単純なんだなと再認識して少し落ち込みつつ……。
「はい、あの本当にこのお気持ちだけで」
『じゃあ、物じゃないプレゼントはどうかな?』
「……ほ?」
あまりのマヌケ声に、赤司さんは軽快に声を揺らして笑った。
『探しもののお手伝いをさせて貰うというのは?』
「探し……物?」
何か、失くしたっけ。
家の鍵、サイフ、スマートフォン……失くしてしまいそうな物を次々連想したけれど、どれも当てはまらない。
「私、失くしたものなんて……」
『君の、家族だよ』