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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第80章 進展


『誕生日のプレゼントを、と思って連絡したんだ』

……誕生日の、プレゼント?
誰が?
誰に?

……頭の中に浮かんだ疑問、いくら考えても解はひとつしかなくて。

「え、えっと……私に、ですか?」

『他に誰がいるんだい』

「……緑間、さん?」

確かに、と向こうで笑っている声はいつもの赤司さんだ。
穏やかで、電話口では感情が読めない声だけれど……。

『誤解させてしまったかな。変な意味があるわけじゃないよ。友人として、何がいいかなと考えていたんだ』

「あの、このお電話で十分です。とっても嬉しいです、ありがとうございます」

自分の誕生日を誰かが覚えていてくれてお祝いしてくれる。
それがとってもとっても嬉しくて。

普段会う事のない赤司さんも、覚えていてくれたんだ。
その気持ちが、一番の贈り物だと思う。

だから、プレゼントなんて貰うわけにはいかないよ。
本当に、私にそこまで気を遣わないで欲しい。
そして、大切なお金を使わないで欲しい。
失礼にならないように辞退するにはどうしたら……

『実は黄瀬にも相談したんだけれどね、君はきっと受け取らないだろうって、そう言うものだから』

……私の行動パターンなんて、涼太には全部お見通しなんだろうか。
ふたりが電話で話している光景を想像して嬉しくなりつつ、私って単純なんだなと再認識して少し落ち込みつつ……。

「はい、あの本当にこのお気持ちだけで」

『じゃあ、物じゃないプレゼントはどうかな?』

「……ほ?」

あまりのマヌケ声に、赤司さんは軽快に声を揺らして笑った。

『探しもののお手伝いをさせて貰うというのは?』

「探し……物?」

何か、失くしたっけ。
家の鍵、サイフ、スマートフォン……失くしてしまいそうな物を次々連想したけれど、どれも当てはまらない。

「私、失くしたものなんて……」

『君の、家族だよ』


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