第80章 進展
それにしても……落ち着くんだけれど、落ち着かない。
もはや正しい日本語が迷子になってしまうくらい、ふたりはゼロ距離で。
触れ合っている部分が熱くて、もしかしたらその内に自然発火するかもしれない。
頭を撫でてくれていた手が、ふいにそっと腰を撫でた。
「……っん」
思わず腰を反らせて反応してしまう。
一瞬で感染症のように広がる、甘い快感。
その大きな手から、どうやったらそんなに優しい触れ方が出来るんだろう。
「みわさ……ガマンしてんスから、可愛い反応しないでくんないっスか」
「そ、そんな事言われても……!」
涼太はそう言いつつも、からかうようにあちこちに触れてくる。
逃げようにも、がっちりホールドされた身体はぴくりとも動かなくて。
「っん、……っ」
彼を覚えている身体が、じくじくと膿んでいるかのように、疼く。
「そんな声出して……みわはエッチっスね」
「……!」
カアッと頭に熱が昇っていくのが自分でも分かる。
触れられているだけなのに、その先の先まで想像して感じてしまうのは、私が変態さんだからなんだろうか。
「そ、そんな風に言う方が、そうなんだと思いますっ」
悔しくて何か言い返したいと思うのに、肝心なところを伏せてしまうと全く意味がなくて、涼太はまた身体を震わせて笑ってる。
「そんな風に言う方が?」
「あの、え、エッチなんだと思いますっ!」
「……オレはエッチだって、前から言ってるっスよね?」
「っあ、待っ」
内腿に触れた指が、上へと上がっていく。
足を閉じて制止しなきゃと思うのに、それどころか開いていくのはどうしてなのか。
ゆっくりと中心へ近づいてきた指は……ピタリと静止して、何事もなかったかのようにするりと離れていってしまった。
「あ……」
「……んな残念そうな顔しないでよ。誕生日、ゆっくりさせて貰うっスから、ね? 予定詰まってるんスよね、夕方からの時間をオレにちょうだい」
……どこまでも優しいのが涼太で。
結局その日は、労わるようなキスを交わしただけだった。