第80章 進展
「私……元気、いっぱい貰ったよ」
薄暗い部屋で彼の胸の中に閉じ込められて、視界に入るのは彼のTシャツの濃い色だけ。
息を吸うと、大好きな香りに満たされる。
涼太がそこにいるだけで、いっぱいいっぱい幸せを貰えるよ。
「いや、オレの方が励まされちゃってさあ……」
「……そう、なの?」
私の言葉が、彼の励ましになったんだろうか?
思い当たる節はないけれど、少しでも涼太の元気になれたのなら良かった。
照れたように私の後頭部をくしゃりと掴む手はいつものようにあったかい。
「……みわは遠慮しないでいいんスよ、みわの家族のコトなんだから。みわ気が済むまでやれば」
「うん……ありがとう」
お父さん、お父さんのこと、覚えてなくてごめんなさい。
でも私、きっとお父さんの事が大好きだったんだ。
私の大好きなひとがそう言ってくれてるから、間違いないと思うの。
お父さん、会いに行ったら喜んでくれるかな?
突然私が現れたら、驚くかな。
もう、あんな風に肩車をして貰う事が出来ないくらい、大きく成長したよ。
お父さんの所に、会いに行くから。
涼太に聞いて貰って、胸を覆う不安な気持ち、不快感がなくなった。
ずっと、お父さんの事……家族の事を知りたいと思っていても、私は調べる権利なんかないんじゃないかって、思ってた。
そんな事言ったら、涼太は"権利なんか必要ない"って言ってくれるのかな。
ずっと、今は忙しいから……とか、まだ未成年だから……とか、言い訳してきた。
でも、もうそんな事をするのはやめよう。
堂々と、私も家族に向き合おう。
だって、私が大好きだった家族の事だもの。
涼太の言葉はいつも凄いパワーを持っている。
涼太は自覚がないかもしれないけれど、いつも彼の言葉で目の前が明るくなるんだ。