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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第80章 進展


「お父さんの事が、好きだった……?」

「そ。例え記憶がなくなったとしても、それは表面的なものなんスよ。心の奥底では、お父さんに対する気持ちって、まだ残ってるハズ。みわがあの……刺された事件の時も、そうだったっしょ」

確かに……あの時はそうだった。
胸になにかつかえてるような感じがして、ずっと気持ち悪くて。
何故か、涼太の事がすごく気になって。
あれも、そういう事だったのかな……。

私がこんなにお父さんにこだわるのは、お父さんが大好きだったから?

「ごめんね……いつまでも気にしてて。ちゃんと調べれば分かることを、今ごちゃごちゃ言ってても仕方ないのに」

涼太の近くにいると、距離とともに遠慮までなくなってしまいそうで怖い。

この大きな胸が全部受け止めてくれるようで、甘えちゃうんだ……。

「オレは気になるコトが悪いとは思わないっスよ」

「え……」

「そうやって、ココロって動かしとかないとすぐに硬くなっちゃうんスよ、きっと。普段から色んなコトで動揺してるみわがオレは好きっスけど」

まさかのブーメランに、ボッと顔が熱くなる。
それを感じ取ったのか、涼太は楽しそうに笑った。

「オレは逆に、そーゆーの冷めてるトコあるからな……」

ぽつりと漏らしたその言葉は、笑い声とは対照的に寂しげで。

確かに、涼太は意外とそういう面がある。
人懐こい性格なのかと思いきや、"認めたひと"と"それ以外"でバッサリと境界線を引いてしまうような冷静な部分が。

でも、それが彼のいいところの内のひとつだ。

「涼太のそれは、短所じゃないよ。ちゃんと自分の中で"選ぶ"事が出来るひとってそうはいないと思うの」

涼太は、常に"選ぶ"事が出来る立場のひとだ。
それだけのものを、このひとは掴み取ってきたから。

……でも。

「でもそれと同時に、自分が傷付かない為の防御策でもあるんだよね、きっと」

ぎゅ、と私を包んでいる腕に力が込められた気がした。

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