第80章 進展
「……そうだと、いいな」
愛されて、育った?
……お父さんは、私の事をどう思っているんだろう。
こんなに何年も離れているのに、連絡の類は一切ない。
文字通りの音信不通。
お母さんだってそうだ。
記憶にない……お姉さんだって。
皆、それぞれ幸せに暮らしているんだろうか。
家族ってなんなんだろう。
ううん……そんな事、今考えるのはやめよう。
どれだけ考えても頭を悩ませても、想像でしかない。
私にはおばあちゃんがいてくれる。
涼太も、あきたちもいてくれる。
これ以上何かを望むなんて、贅沢だ。
それなのに、家族が……お父さんが、今何をしているのかだけでも知りたい、とどうしても思ってしまう。
どんなひとなんだろう。
夢の中のお父さんは、私に少し似てた。
私、お父さん似なのかなぁ。
ああやって、色んな所に連れて行って貰ったのかなぁ。
……どうして、忘れちゃったのかなぁ……。
もしかして、もういらないって、言われたのかなぁ。
それが悲しくて、忘れちゃったとか……。
左手がジンと痛くなってきた。
だめだ、感傷的になっちゃダメ。
昼間あんな事があって、少し疲れてるんだ、きっとそう。
こんな事でこころを揺らしちゃだめ。
「みわ」
「……うん?」
「大丈夫っスよ。何があっても、オレはみわのそばにいるから」
……だから、どうして。
どうして無条件に、優しくしてくれるの。
「おねがい、今はちょっと……あの、疲れてるから、おねがい、やさしく、しないで」
なんでこんな事で泣いてるんだろう。
飲んだお薬に、泣ける成分が入ってたのかな。
「ごめんなさい、ちょっと変なの……こんな風にするつもり、なくて……すぐ、戻るから」
大きな手が、頭を撫でてくれる。
「みわが無意識でもそんなになるのは、お父さんのコトがすんごく好きだったからっスよ」