第80章 進展
涼太は、出逢った高校1年生の時よりも更に身長が伸びて、190㎝を超えた。
私も、女性にしては背が高く、170㎝近くあるし……
つまり。
「……涼太、狭い……よね?」
私が普段寝ているお布団では、どう考えても狭い。
涼太ひとりで寝るのだって、ちょっと窮屈そうな感じがするのに。
「んー別に、感じないっスけど」
「う、うそだ、狭いよ」
引き込まれたお布団内は、涼太と私が密着して、もう余裕なんてない。
多分涼太はあちこちはみ出してるだろう。
寒い時期じゃないから良かったけれど、これが冬場なら間違いなく風邪を引く。
涼太が泊まりに来てくれた時の事を考えて、お布団用意した方がいいのかな……。
はっ、泊まりに来てくれるなんて、なんてまた贅沢な妄想をしているんだろう。
だめだめ、身体が資本のスポーツ選手がこんな煎餅布団で寝るなんて、とんでもない!
顔と顔が近すぎて、とても目の前のひとを直視できそうにない。
目を逸らしたまま、新しいお布団を選ぶ妄想にでも励むことにする。
「みわ、ほっぺと口、痛むっスか?」
後頭部を優しく撫でられながら掛けられた言葉は優しくて、その声色は、彼がこれ以上ないくらい私を心配してくれているのが良く分かる。
「もう大丈夫だよ。お薬飲んだから」
「なら、いいんス、けど……」
涼太らしくない歯切れの悪さ。
本当に心配いらないのに。
心配させてばかり、気にさせてばかりは嫌だな。
折角一緒に居られるんだもん、もっと明るいお話がしたいな……。
「あの……ね、お父さんが夢に出て来たの」
「え、みわの? 顔……覚えてないんスよね?」
「ふふ、都合良くね、顔だけは見えなかったんだけど……お父さんだった。ちっちゃい頃の私が、肩車して貰ってたんだぁ」
「そっか……少しずつ思い出せるといいっスね、みわが皆に愛されてた頃のコト」
愛されてた……?
「愛されてた……のかな。それは、分からないけど……」
私、皆から疎まれていたのかもしれない。
真実を知るのが、怖いのに……なんでそんなに断言できるの?
「分かるっスよ。みわを見てれば。いっぱい愛情を受けて育ったんだなってさ」
涼太は、なんでもない事のようにそう言い切った。