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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第80章 進展


「みわ、おいで」

「はぁい」

あ、今の私を呼ぶ声、凄く懐かしい感じがした……誰の声、だっけ?

目の前を歩くのは、男性と手を繋いだ小さな女の子。
周りの景色は、高い高い天井に、沢山のソファ。
そして、大きな窓からは何機もの飛行機……あとはぼんやりしてハッキリ見えないけれど、ここ、空港、かな……?

女の子の顔はよく見える。
覚えのある顔……あれは、私だ。

手を繋いでいる男性の顔は、靄がかかってよく見えないけれど、口もとだけはぼんやり見えて……私に、似てる。

「みわ、みわが幸せだとパパもママも幸せなんだよ」

パパ……そうか、このひとは私のお父さんなんだ。

「どうして?」

「んー、なんて言ったら伝わるかな? パパもママも、みわが大好きだからだよ」

「んー……わかんない!」

幼い私はえへへと笑って、お父さんに向かって両手を広げる。

お父さんは、口もとを優しく緩めて私を抱き上げ、そのままひょいと肩車をした。

「みわも、いつか分かる時が来るかもしれないなあ」

「あー! ひこーき!」

飛行機を指差した私は、もはやお父さんの言う事も耳に入らずに興奮状態。

「パーパ! パーパ!」

「うんうん、パパも見てるよ。みわは本当に飛行機が好きだね」

そのままふたりは、楽しそうに喋りながら歩いて行ってしまった。

とても、幸せな光景だった。







視界がゆっくりと広がって行く。
薄暗い、私の部屋……?

目が重たい。
そうだ、頭が物凄く痛かったんだ。
今は……それほど痛くない。薬が効いたのかな。

まだ微熱があるのかな……身体は重くて。

なんだか、凄く幸せな夢を見た……。
悪夢で目を覚ます時とは全く逆の気分。

「みわ、どうスか?」

覗き込んできたのは、長い睫毛が影を作っている、切れ長の瞳。

夢の中のお父さんの言葉で最初に思い浮かんだのは。

「涼太……」

涼太が幸せだと、私も幸せってこと。

彼と居ると、何よりも幸せってこと。




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