第80章 進展
頭が重い……。
風邪を引いた時みたいに目の周りが熱くて重くなっている。
ご飯を食べたら薬飲まなきゃ……。
「みわ、夕飯は?」
「あ……そうだね、家にあるもので、作ろうかな」
冷蔵庫の中に残っている筈の食材を思い出し、すぐに作れそうな料理を数品思い浮かべた。
涼太も、あまり待たせなければ食べていけるかな?
ずっと病院の付き添いをしてくれて、お腹空いてる筈。
「もうこんな時間だし、体調も良くないんだから無理はしちゃダメだって。簡単に出来るモンでいいなら、オレ作るっスよ」
サラッと出て来たその発言に驚いて、凄い勢いで彼の方に向き直ってしまった。
ハンドルを握って前を向いたままの横顔に、疲労の色は見えない……けれど、多忙な彼の事だ、きっと疲れが蓄積しているはず。
それをおくびにも出さずに私の事を思い遣った言葉。
本当に、さっきから申し訳ないしか言葉が無い。
そもそも、こんなに帰りが遅くなるなんて……。
彼に無駄な負担をかけないように、途中コンビニに寄って貰って、お弁当を買う事にした。
……というかお弁当までご馳走になってしまい……うう、本当にダメだ、私。
涼太はマンションのエントランス前で私を降ろし、近所の駐車場に停めてくると言い、行ってしまった。
痛む頭を押さえ、ポストを開けてチラシと電気料金のお知らせの紙を取り出し、リュックへ入れた。
「みわ、お待たせ!」
本当に、時間にしたらわずか数分。
涼太は長い足を惜しみなく使って、エントランスに駆け込んできた。
家に着いたらすぐに飲み物を出してあげよう、そう思ったのに有無を言わさずに部屋へと連行され、手際よく敷かれた布団に座らされてしまう。
「みわ、テーブルで食事すんの、ツライっスよね?」
まるで重病人だ。
……ううん、本当のところは彼の言う通り身体が怠くて、そもそも食欲なんて全くなくって……。
でも、これ以上涼太を心配させたくなくて、少しだけ誤魔化してリビングで食事をとった。