第80章 進展
"175番でお待ちの患者様、第1診察室へお入り下さい"
そんなアナウンスと共に、壁に掛けられた電光掲示板にも"お呼び出し中 175"と表示された。
みわは、手元のクリアファイルに挟まれている番号が書かれたレシートのような紙と、電光掲示板へ視線を何度も行き来させてから、立ち上がった。
「私だ。涼太、行ってくるね」
「ひとりで大丈夫スか?」
「うん、大丈夫。ありがとう」
診察室に向かう足取りに怪しいところはない。
……本当に、大丈夫なんだろうか。
あんな顔で行ったら、医者もビックリするだろう。
……カミサマお願い、なんか大きな病気とか怪我とか、勘弁して。
みわにこれ以上辛いこと、させないで。
それからみわはアレコレと検査を受けた。
脳に関する検査で最新の機器が入っているのがこの病院らしい。
それに、医者もなんかのケンイ? とかいうヒトが多いんだって。
情報提供と手配にすぐ動いてくれた、赤髪の同級生にまた感謝だ。
検査費用は……とかみわは気にしてたみたいだけど、今はそんな事言ってる場合じゃなくて。
オレが連れて来たんだ、そんなのまで気にしないで今は大人しく検査を受けて欲しい。
みわは嫌がると思うけど、待ってる間にお祖母さんにも一報を入れた。
殴られたなんてとても言えなくて、当たり障りのない説明にしたけれど、勘のいいお祖母さんのことだ、何かピンと来てるだろう。
検査室から出て来たみわと、院内のカフェに行ったりして暫く結果を待って……検査の結果、脳に異常は無いとの事で。
でも、隣のみわは頬を赤くし、さっきよりもずっとしんどそうにしている。
口の中の傷が炎症を起こしている為、発熱してしまっているんだそうだ。
違う科に回されてまた診察して貰って、薬を処方して貰って……と、みわの家に帰り着いたのは、夕飯時をとうに過ぎた頃だった。