第80章 進展
問答無用で後部座席に横たえられて、近所の病院に……と言う隙もなく車は発進。
気が付けば、一度行った事のある近くの医院とは比べものにならない規模の病院に連れて行かれてしまった。
観念して総合受付で初診の受け付けをしようと思ったのに、その前にずらりと並べられた質の良いソファに座らされ、オレが代わりにやってくると言ってさっさと行ってしまって……もう、何から何まで甘えっぱなしだ。
こういう所って、紹介状とかがないと診て貰えないんじゃ……と不安になりつつも、涼太は受付で一言二言話すと、青いクリアファイルを持って戻って来た。
「みわ、立てるっスか? 4階だって」
「う、うん、ありがとう何から何まで」
そっと腰を支えられて、エレベーターでは他の患者さんと距離を置けるように守られて。
……不謹慎なんだけど、お姫様みたいだ。
目の前の王子様は、童話の中の王子様よりもずっとずっと素敵。
大きな、背中……。
今までどれだけ助けられてきただろう。
これからは、私が支えられるように……
「……みわ、みわ?」
「あっ、何?」
いけない、ついまた考え込んでしまった。
何? じゃない、4階に着いたんだ。
そっと腰を押されて、ゆっくりとエレベーターを降りた。
「みわ、気分悪いんスか? 歩ける?」
「ごめんね、ちょっと考え事してただけなの。なんでもないよ」
うっかりボーッとしていたら、またお姫様抱っこなんて事になってしまいそうで、焦って否定した。
切れた口がズキズキと痛んできた。
ああ、嫌な事を思い出す……。
4階のフロアは、人で溢れていた。
皆それぞれ具合が悪い所があるんだろう。
病気ひとつとっても、ひとと同じって事はなかなかなくて。
順番が来るまでの間、嫌な記憶を封じるために涼太とバスケのお話をした。
理由を知らない涼太には、それどころじゃないでしょと怒られながら。
自分を心配してくれるひとがいるって、本当にありがたいこと。