第80章 進展
「たまたまだ。今日たまたま有休が取れたから、様子を見に来ただけだ」
「……ふーん」
あきはいまいち納得しきれないといった表情で、そう返した。
というよりも、そう返すしかないんだと思う。
だって、彼があきの予定を知る事は実質不可能だから。
今日ここにあきが帰ってくるのは、私としかやり取りしていないと言っていたもの。
本当に、たまたま……なのかな……。
「じゃあ、アンタのポケットに入ってたコレはなんなんスか?」
涼太がそう言ってテーブルの上に出したのは……スマートフォン?
どこにでもある、スマートフォンだ。
あきの彼は、それを見て驚愕の表情を浮かべた。
「そ、それは……」
「うん、これは? なんなんスか?」
何? 涼太は何を言いたいの?
聞くよりも先に、あきが一歩前へ出た。
「それ……あたしが前に使ってたスマホ。最近見当たらないから探してたのに……なんで?」
「あきサン、ほら」
涼太が向けた画面に映っているのは、皆がよく利用しているメッセージアプリ。
緑の吹き出しマークのアイコンが特徴だ。
それが、何か……?
私もあきもそう思って画面を覗き込んだけれど、表示されているものを見て、その目を疑った。
そこに表示されていたのは、先程までのあきとの会話だ。
「え……なんで? なんでみわとの会話がここに出てんの?」
「あきサン、機種変した時にアンインストしなかったっしょ」
「うん……面倒だし、目覚まし代わりとかに使うしネットも使えるから、特に何もしないでそのままだった」
「これね、機種変更してもアプリが残ってる限り使えちゃうんスよ。これで監視してたんだろ」
あきの彼は、がくりとうなだれた。
それは……肯定の合図だ。