第80章 進展
懇願して懇願して……でも結局涼太は止まらなくて。
数回殴った後に、あきがようやく止めてくれた。
怖くなるくらい、現場は静かだった。
マクセさんの提案で、とりあえず全員一度家に入る事に。
あきの彼の顔面は、血で染まっていた。
「みわ、歩けるっスか」
こちらへ戻って来た涼太は、いつもと変わらぬ優しい口調だった。
何か言おうとしても、殴られたショックと涼太がひとを殴ったショックで、とてもうまく喋れそうになくて……とにかく夢中で頷いた。
これ以上私の事で面倒をかけてはいけない、と思ったのに……結局涼太は、手の甲を服の裾で拭った後に、軽々と私を抱き上げた。
リビングは、異様な雰囲気に包まれていた。
4人掛けのダイニングテーブルに座っているのは、涼太とマクセさん、それに反対側にあきの彼。
私とあきは、床に座って行く末を見守っている。
「痛っ……」
「ごめん、みわ」
あきの作ってくれた氷のうが頬に触れると、鈍い痛みが顔中に広がった。
彼女は目を合わせる度に謝って……こんな泣きそうなあき、初めてだ。
彼からDVを受けていると打ち明けてくれた時ですら、こんな表情にはならなかった。
「で、アンタなんなんスか」
私たちの会話を遮ったのは、涼太の声。
背筋が凍るような、冷たい冷たい声音だ。
その言葉が向けられた先……あきの彼は、腫れあがった顔を押さえながら何かぶつぶつ言っている。
「ストーカーみたいな真似して、みわにケガまでさせやがって」
涼太の怒りは1ミリも治まっていない。
ハラハラしながら見守っていると、あきが立ち上がった。
「ねえ、なんであたしが今日ここに帰って来るのを知ってたの?」
そうだ。
そもそも、今日は一体何が起こっていたの?