第80章 進展
「あきの顔を見たくて。久しぶりだね」
「そうじゃなくてさ……」
ふたりが話し始めてからも、ずっと考えてる……どうして今ここに彼がいるのか。
毎日こうして張っていた?
ううん、彼だって社会人だ、そんな毎日待ち伏せ出来るわけがない。
確信をもって、今日……今ここに居るんだ。
なぜ?
何度考えても答えは出なくて。
でも、今ここでそんな答えを出しても、状況が変わるわけじゃない。
最優先事項は、それじゃない。
「宅配便にくっついて入ってきたの? 悪いけど、帰ってくれるかな。忙しいんだ」
あきは、出来る限り平静を装って彼を追い返そうとしている。
でも、彼は全然動じてない。
「探し物があるんだったよね。僕も探すのを手伝おう」
文字通り、私たちふたりは固まった。
どうして、あきが探し物をしに帰って来たと知っているんだろう。
「ねえ、ごめん……帰って」
「あき」
彼の手が私から離れ、あきに向かっていく。
その手は、今度はその細い手首をガシリと掴んだ。
「あき、聞いて欲しい」
「やだ、放して」
「あき」
「は、放して下さい! あきは、帰って欲しいと言ってます!」
「関係のないみわさんは下がっていて貰えますか」
ここに来て、彼の眉間に僅かな皺が寄った。
不快なものを見下ろす表情。
身長は笠松先輩よりも少し低い……くらいなのに、凄く嫌な威圧感が襲い掛かってくる。
でも、ここで怯んだら相手の思うツボだ。
「関係あります、あきは大切な友達だから」
「あき、おいで」
恐怖の記憶が湧き出てきたのか、あきは驚いたように肩を竦ませて、一瞬動きが止まってしまう。
その隙を彼が見逃すわけがなく……強い力であきの腕を引き、玄関ドアへと向かおうとしている。
「待って!!」
慌ててその腕にしがみついた。