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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第80章 進展


日中はやっぱり、暑いなぁ……。
階段は日陰になっているから直射日光を浴び続けるよりもマシだけれど、やっぱり暑い。
おうちに入ったら、冷たいお茶を飲もう。

外階段からは表の道路が見えるけれど、まだあきの姿はない。
余所見していると誤って転げ落ちてしまいそうで、急いで階段に視線を戻した。

3階の表示が見えて来た。
あと1階分だ。

少し重みを増した足を頑張って上げようとして……止めた。
先ほどまでの階段になかったものが目に入ったから。

それは……影、だ。
何かの影が、これから上ろうとしている段を黒く染めている。

影を生み出している元となるものは、ここからでは見えない。
もう少し上らないと……。

足音を殺しながら、数段上り、そっと壁の向こう側を覗いて……一瞬、なんだか分からなかった。

2本の棒? なんてトンチンカンな事を思い浮かべて……すぐに払拭する。

足だ、これ。

慌てて顔を引っ込めて、音を立てないように深く呼吸をする。
え、待って……誰?
このマンションは1フロアにそれほど戸数がない。

他の家のお客さんとは考えにくい。
さっきの、柔らかそうな生地、ネイビーのスーツ……。

あきの、彼だ。

どうしよう、とりあえずあきに連絡しなきゃ。
まだこちらは気付かれてない。

そっとスマートフォンを起動して、メッセージアプリを開く。
あきからメッセージが入っていた。

"おはよー。もうすぐ着くー"

受信は数分前。
すぐに止めて、引き返すように伝えなきゃ!

"マンションに彼が来てる。
今日は来ない方がいい!"

とにかく早く送らなきゃと、震える指先を駆使してそれだけ送信した。

歩いてて、気付かないかも……と思ったけれど、すぐに既読表示がついた。

良かった。
私も、とりあえずここから離れた方が良さそう。

そっと踵を返して、スマートフォンを鞄にしまおうとして……何かに手首を掴まれた。

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