第80章 進展
翌朝、なんだかいつもよりも早く目が覚めた。
頭が重い……昨日、考えごとし過ぎちゃったかな。
すぐ睡眠に影響が出るの、本当にだめだめだな……。
顔を洗おうと布団を抜けたら、枕元のスマートフォンが振動した。
画面に表示された4文字に驚いて、何故か慌ててまた布団に飛び込んだ。
「もっ、もしもし!」
『オハヨ、みわ。昨日電話出来なくてごめんね。今大丈夫っスか?』
「うん、大丈夫。おはよう……」
耳から入ってきた声が、こめかみを通って頭の中を巡る。
どんな頭痛薬よりも、効くかもしれない。
なんだか、ホッとする……。
『なんか元気ないっスね。もしかして、寝てないんスか?』
「ううん、寝たよ、大丈夫。午後、あきが来るからちょっと心配で」
『あきサンが? 大丈夫なんスか?』
「うん、私も居るし……大丈夫だと思うんだけど」
『みわ、十分気をつけるんスよ。なんかあったらすぐ連絡して』
ふんわり柔らかい声から、一気に緊張感漂う声色に。
心配ばっかりかけちゃ、ダメなのに!
どうしてこう、正直に言っちゃうんだろう……。
「うん……ありがとう、大丈夫。涼太も練習、頑張ってね」
よし、単純かもしれないけれど、元気出た。
再び布団を抜けて、足早に洗面所に向かった。
講義が終わって、自宅マンションのエントランスに帰り着いたのはちょうど正午だった。
あきはあと30分くらいで到着する予定と聞いている。
ポストに何も入って無い事を確認して、周りに誰もいない事をしっかりと見てから、オートロックを解除して自動ドアをくぐった。
部屋は4階だし、よほど急いでいる時では無い限り、階段移動にしている。
どうしてもエレベーターを使うのを避けてしまって……運動にもなるし、気持ちに余裕のある時にはエレベーターに乗る練習を。
少しずつ、今まで通りに戻れるように。