第26章 オンナノコ
あれから数日。
黄瀬くんとはクラスでは席が隣なので何かと話すし、授業が終われば部活でずっと一緒だ。
最近、黄瀬くんの事を客観的に見る機会が多くて、この人は本当になんて綺麗なんだと思う事が増えた。
同時に、私も彼の恥にならない程度には気にしなければならないのだとも思う。
彼の評価を貶めるような事だけは、したくない。
今まで、外見なんて全く気にしていなかった。
黄瀬くんのことも、自分のことも。
私は外見で黄瀬くんを選んだ訳ではないから深く考えた事がなかったけど、やっぱり彼女は可愛いに越したことないと思うし……。
黄瀬くんはきっと外見で判断するような人ではないと思う。でも……
流石に、デートにTシャツとジーンズで行く女はどうなのかと思ってきた。
なぜこんな事を今更悩んでいるのかと言うと、黄瀬くんから、海常祭の数日後にある休養日に、1日デートしようと誘われてしまったからだ。
今までだって、学校帰りに寄り道したり、この間のようにラーメン屋に行ったりしたけれど、オシャレなんて考え付きもしなかった。
元々、私は洋服を殆ど持っていない。
祖母にお金の面で迷惑をかけたくなかったから装飾品の類は一切持っていないし、洋服は地味で露出がなく、女らしくない物をあえて選んでいた。
まさかこの自分に彼氏が出来て、デートの服装に悩む未来があるなんて、あの時の私には考え付きもしなかったから。
買い物に行くチャンスがあるとしたら、1回。
設備点検の都合で体育館が使えない日がある。その日に行くしかない。
こんな時に頼れるのはあきしかいないので相談してみたけど……
「わーごめん! その日だけはダメなんだよ。他の日ならなんとかなるんだけど!」
「そっかあ……突然だったもんね。ありがとう」
どうしよう。
1人で買い物に行ったって、一体何を買えばいいのかから全く分からない。
それなりに調べはしているものの、それが似合っているかどうかは判別がつかなくて……。
どうしよう。
そんな時に、1通のメールが届いた。
桃井さんからの、お誘いメールだった。