第25章 勉強だったり合宿だったり新学期だったり
2人とも、特別な場所である体育館で、最後までするつもりはなかった。
彼に直接確認したわけではないけれど、考えていることは同じだと思う。
ただひたすら今は、お互いがお互いを必要としているという実感が欲しかった。
飢えた身体をお互い受け止めて、満たして欲しかった。
「く……っ」
普段の明るい声からは想像できないような、余裕なく甘く喘ぐ声が彼から漏れる。
彼のモノは既に先端が濡れており、手が触れると腰を捩らせ、更に喘いだ。
いつも彼がそうしていたように、私も間近で感じている彼の顔を見る。
眉根を寄せて快感に耐えるその顔は変わらず美しく、伏せた目を覆う長い睫毛にすら、興奮を覚えた。
「気持ち、いい……?」
普段彼はこういう時に、どうやって自分に甘く囁いたか。
思考を巡らせても頭の芯が痺れており、解答を導き出すことは困難だった。
「んっ……みわっち、きもちいー……」
身体を震わせ、私の手の感覚を味わっている姿が堪らなく愛しい。
まだ皆がいる学校内でこんなことをしているなんて。
そんな背徳感に益々煽られる。
慣れない手つきで懸命に彼のモノを扱くと、手の中で一段と大きく膨張するのを感じた。
「ごめ、イク……」
そう小さく呟くと、精液が吐き出された。
ねっとりとした熱い液体が、手に絡まる。
身体を小刻みに震わせ、恍惚の表情を浮かべながら小さく喘ぐ姿があまりに綺麗で、自分が今何をしていたのかすらどうでも良くなってしまう。
「っ、は、ごめん……っ」
射精が収まると黄瀬くんはさっと鞄に手を入れ、タオルを取り出した。
丁寧に私についた欲の塊を拭う。
「……どうして謝るの」
ふと恥ずかしさがこみ上げてきて頭を黄瀬くんの胸に預ける。
謝らないで。少しでも後悔しないで欲しい。
欲に任せて動いたのは私も一緒だから。
快楽に抗えない。なんて浅ましい。
黄瀬くんは、拭き終わったタオルを足元に落とし、代わりに私の身体に優しく手を回し、抱きしめてくれた。
「……みわっち……ごめん……好き」
優しく響くその音が嬉しくて、私も、と返すのも忘れ、ただ強く抱きしめ返した。