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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第79章 邂逅


「聞いた方がラクになんなら聞く。そうじゃねえなら今日は帰るわ。悪かったな、遅くまで」

センパイのこの絶妙なカンジは、天性のものなんだろうか。
押しすぎず、引きすぎもしない。
皆がこのヒトを慕うワケが分かる……つい頼りにしてしまうってゆーか。

「あの、言えないとか言いたくないとかじゃないんス。ちょっと、自分でもどうにもできないからなんて言ったらいいかっつーかなんというか……」

「自分じゃどうにも出来ない?」

「……笑わないっスか」

「笑わねえよ」

質問内容すらまだ聞いていないのにそう断言するセンパイ。

「……オレ、神崎みわが好きなんスよ」

「オマエの周りにいる人間なら、まず間違いなく知ってるよ。今更どうした」

「はは……そうっスよね。上手く言えないんスけど、マジで大切すぎて……壊したくなるんスわ」

「あ?」

センパイは、気持ちいいくらい眉を顰めた。
これ、普通の反応だよな。

「お前何言ってんだって思われると思うんスけど、本当に……時々すげー歯止めが効かなくなるっていうか……」

「大切にしてえのに壊してどうすんだよ」

「いやホントそのツッコミはごもっともなんスけど……スンマセンおかしなコト言って」

「茶化してるわけじゃねえよ。なんでそう思うのかって聞いてんだ」

「なんでそう思うのか……」

なんで、そう思うのか。
それは、自分の中の中のもっと奥底にある、汚い汚い欲望。

「壊しちゃえばね、もうオレんとこ以外にはいかないって思うんスよ」

壊して、オレなしじゃ生きられないようにして。
鳥籠に閉じ込める、なんて表現すら生ぬるいくらいに、縛りたい。

「絶対に欲しくて、いつかはこの手の中からこぼれ落ちてくのが怖くて、嫌われるのが怖くて……自分で自分が情けなくなるんスけどね、もう壊さないと手に入らない気がして」

センパイの口からはあ、と大きなため息が出て、代わりにバウムクーヘンをぽいと放り込んだ。

「……歪んでんなあ。まあ、なんかオマエらしいけどな」

オレもつられてバウムをひとくち。
何故だかさっきよりも少し甘く感じた。





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