第79章 邂逅
「お、黄瀬。いいじゃねえか、そのキーケース」
「さすがセンパイ! お目が高いっス!」
練習後、空調のきいたロッカールームのベンチに置いておいたオレのキーケースを見つけた笠松センパイの一言。
みわがくれた誕生日プレゼントだった。
クルマを買ってから今までは、ゆっくり買い物に行く時間もなくて、よく利用するショップのキーケースを使っていたけど、いつかは買い替えたいと思っていたところに。
ファッションにはてんで無頓着なみわ、きっと色々調べてあちこちお店を回ってくれたんだろう。
彼女が選んでくれたのは、英国レザーグッズのブランド物だった。
落ち着いたブルーの外見、中を開けるとイエローレザーが顔を出す。
イギリスでは意外にも黄色をブランドカラーにしているブランドが多い。
そう言えば昔、結構年上のモデルのセンパイが財布持ってたな……そう、大人のブランドだ。
気品がある色使いに、手になじむ上質な革の触感。
英国紳士の佇まいを感じさせるっていうか、持ってるだけで、なんか背筋が伸びるようなアイテム。
美しい立ち姿のみわを思い起こさせるような、そんなプレゼントだった。
「なんか……黄色の物ばっかり買ってるよね、ごめんね……」
黄色を見るとオレを思い出してしまうと困ったように言うその顔が可愛くて。
そこら辺にある黄色を見つけるだけでオレを連想するとか、何それ。
幸せすぎる発言に、満面の笑顔。そのままもう1回シたのはまあまた別の話で……。
「みわが誕生日にくれたんスよ、へへへ。あの夜は熱かったっスわ……みわも積極的で」
「き・い・て・ね・え・よ!」
「イターッ!」
ゲシッと蹴りが飛んでくるのはいつもの通り。
「期待はしてなかったが、成人しても全く変わんねーな……おら、皆待たせてんだから行くぞ」
「はーい!」
その日は日が変わる直前まで、バスケ部のメンバーで散々飲み食いした。