第79章 邂逅
「はぁー……も、時々みわに殺されるんじゃないかって思うっスわ……面白すぎ」
涼太はころんと寝返りを打ってこちらに戻って来て、腕枕を再開させた。
その切れ長の瞳は潤んでいる。
「う、うう……オトナの事情が分からない子どもってことですね……」
「ああ、違うんスよ。オトナのセックスってのは別にSMとかじゃなくてさ」
「へ……」
違うの?
また顔に出ていたんだろう、涼太はほわっと微笑んで、私の前髪にそっと触れた。
「今まではさ……結構、勢いっつーか……オレの気持ちばっかが走ってたから。これからは、もっと相手のコト……みわのコト考えて、したいなって」
「……あの、前にも言ったかもしれないけど……涼太はいつも、考えすぎってくらい私のこと考えてくれているよ、ね?」
涼太が言ってる事、全くピンともこない。
彼が自分勝手に私を抱いた事なんてあっただろうか。
いつも、真綿に包むような触れ方で、優しくて……う、ちょっと今想像を膨らませるのはやめよう。
まだ熱を持ったままの身体が、下品に疼く。
「うーん、いや、うん、まあ、上手く言えないけどそうなんスよ」
涼太は珍しく言い淀んでしまった。
説明しづらい事でもあるのかな?
「ふたりのココロとカラダがすんごく気持ちよくなって、初めて本当の"気持ちイイセックス"が出来ると思わないスか?」
「うん……思うよ」
望んでもいない性交……悲しいけれど、沢山の経験をした事があるから、これは自信を持って言える。
こころの繫がりがあってこその身体の繫がりだって。
だから、このひととの行為はこんなに幸せになれるんだって。
「あー、最高の誕生日っス。ありがと、みわ」
「そんな……大したお祝いしてあげられなくて」
ごめんなさい、と言おうとした口は、そっと添えられた人差し指で遮られ、続く甘いキスに呑み込まれていった。